認知心理学からみたそろばん 〜世界の論文を眺めると〜
「そろばん学習が与えるスーダンの子どもたちの知能への影響」
Effects of Abacus training on the intelligence of Sudanese children
Paul Irwing, Alya Hamza, Omar Khaleefa, Richard Lynn
Personality and Individual Differences, 2008
イントロダクション
そろばん学習が知能検査である漸進的マトリックス検査の成績を向上させるという仮説をスーダンの小学生を対象に検証した。
実験方法
参加者
そろばん学習群(最終人数1348名)、統制群(最終人数1144名)、参加者数3185名(7−11歳)16の小学校から58クラス ハルトゥーム州スーダン(cf. スーダンの首都はハルトゥーム)
期間
2007年に34週間実施
材料と手順
そろばん学習群は、1週間に2時間のそろばん学習を実施する。統制群には何も行わない。両群の生徒は、そろばん学習介入の前後にそれぞれ1回(合計2回)IQテストを受ける。
一般的漸進的マトリックス検査にてIQを測定する
実験結果と考察
そろばん学習は、直接知能検査の向上を目的としていないにも関わらず、そろばん群の方が有意にIQの成績を向上させた。スーダンの児童のIQ検査の成績はイギリスの児童と比べて低い。この結果は、そろばん学習がこの差を縮めることに大いに貢献するといえる。そして、長期的にこの効果を見ていく必要がある。
感想
2007年にアフリカのスーダンでそろばん学習の効果が3000人規模で実施されていることが非常に興味深い。しかし、統制群は何の学習もしておらず受動的統制群であるため、そろばん学習の効果なのか、一般的に学習量を増やしたことによる効果なのかが不明である。また、参加者が3185名と書かれているが、結果の報告では2492名と減っている。しかしながら、脱落の理由が一切書かれていない。